私の男



解放感など一切ない、
束縛する歪む感情と深い愛。
その象徴が紛れもなくあの紅い血。
切迫した兆候がないあの無邪気な笑いと営み、
それは余りにも残酷な愛の印。
痛いほどの冷たい空気が、
吹き出る血も降り注ぐ血も「赤」ではなく「紅」にさせたのだ。

流氷前、無慈悲のダンス。
愛おしさも、悲しみも、感動も、
どんなに望んでも何も与えてはくれなかった。
だからこそ僕はこの映画が好きだ。
僕の心の余白の中に彼らは住み続け、そこには沢山の愛がある。
そんな気がしてならない。
擦り切れるようなフィルムの変遷はより情緒的でたまらない。

性に対してとても正直で、全く嘘がない。
だから繰り返される愛のシーンが濃厚で官能的。
降りしきる雪が地面に固まり、上を氷が覆う。
その断層が繰り返される行為と同じに思えて、エロースの意味を今も反芻する。

2014/熊切和嘉/★★★★☆☆