チョコレートドーナツ



1館上映から席巻!
1億円をとうに越え、100館以上まで拡大した感動作。

ゲイのカップルが
麻薬常習者の隣人が育児放棄したダウン症の男の仮親申請のために奔走する人間ドラマ。

僕の感想は少し否定的。

仮親になるためのキッカケが簡単に済まされ、こちらの感情の高ぶりを途中で遮るように一旦家族として落ち着いてしまう。
上映時間が90分程なので、構成としてはそれで良かったのかもしれない。
けれど、結果よりもそのプロセスに僕は共感し、そこからの展開を期待してしまうので、
その段階をあっさりと良しとされてしまった。
そんな簡単でいいの?
そもそも隣人の男の子、まして何も知らないダウン症の男の子をそんなに?
と。
執着するのは分かるし、良い人だなとはなるが、
何故そうなったのかの提示が欲しい。
親になるという覚悟、そこをないがしろにしてはいけないと思ったし、
そんな表面的な物語に泣けるのかと。
薄情なのは僕の方なのか。
果たしてそうなのか。
疑問は募るばかりだった。

それでも良かったところも幾つかあって、
何故そんな情が湧いたのか。
その彼の背景、いわゆる人生における過去を一切説明しないので、
想像する余白が生まれその葛藤が観客の感情を揺さぶる。
自分の人生はどうだ、自分ならどうするかなどとリンクする。

彼らのこの姿勢は、やはり性同一性障害であるということに起因すると思う。
この70年代は、ゲイであることが最も生きずらかった時代であろう。
もがき苦しむ人が運動や対立を起こし、より一層反発が生まれていたはずだ。
だからこそ、ゲイのシンガーはダウン症の男の子を一瞬で抱擁したのであろうか。

映すところ、語らないところのバランスは気持ちの良いものがあった。

それでも、泣きポイントの最後の演出で僕は興醒めしてしまって、
その語り口、勿体ないなと思ってしまった。
どうだろうか。
絶賛されている皆さんの声を伺いたい。

2012/トラビス・ファイン/★★★☆☆☆