リベンジ・マッチ



主演二人への敬意が顕著にあり、そのオマージュと、往年のギャクを中心に再起かけるコメディ。
そのコメディ要素が物語を軽くし過ぎて、僕にはあまり響いてこなかった。

笑いも理解出来たが、もう一つ上の世代に向けた、デニーロとスタローンに贈る映画だった。

2013/ピーター・シーガル/★★☆☆☆☆

アメイジング・スパイダーマン2



嫉妬と恋愛の思いの交錯を中心に、アクションの比重に気を使いながら丁寧に描かれた、まさにマーク・ウェブの世界が繰り広げられる。
ラストの着地はやや早過ぎた印象で意表を突かれた。
超人の世界、『マン・オブ・スティール』ではそのスピードに特化し、
目で追えぬ演出だったが、
今作は敢えてスローを用いる事で、見えなかった蜘蛛糸の仕掛けや助ける瞬間を見せ、逆にその速さを感じるという上手い演出だった。

前3作は、不器用さを。
新シリーズは恋愛を。

次を期待させる展開でした。

気になったのは、
グリーンゴブリンの伏線回収の仕方、
旧友との友情の描き方、
本作に直接関わる場面の宣伝の仕方。

まだまだアメイジングスパイダーマンは進化する、そう思えた。

2014/マーク・ウェブ/★★★☆☆☆



レイルウェイ 運命の旅路



戦争の悲惨さ、その裏側にどんな苦渋を舐めたかのドラマ。
この構造は、戦争が当たり前で無くなった今だからこそ顕在化するし、語り継がれる。
だが、何を映画の表側に出すかはまた別にあって、彼が辿った運命は苦しかったが、余りにも映画的で、心からの理解と共感は出来なかった。

2013/ジョナサン・テプリツキー/★★★☆☆☆


名探偵コナン 異次元の狙撃手



赤井秀一の正体を伏線に展開していくが、明らかな点が多く結末に驚きは無かった。
アクションが年々過剰になり、狙撃手よりもこちらの方が異次元であった。他キャラの存在が目立つようにもなり、些かコナンがミスリードする場面もあり、目線の置き所が迷い、困惑した。

原作キャラが初登場を果たし、ファンにはたまらない演出もあった。
アクションは派手だが舞台は地味で、犯人のメッセージが解けた瞬間のカタルシスはあまり感じられない。
ネイビーシールズがここでも登場。
字幕や人物配置、動機が少し大人向けであった。

来年の公開も決まり、コナンはどこまで続くのか、どこに向かうのかとこれからの展開は楽しみな一方、張り巡らされた布石が多すぎて回収がスッキリするのかなど不安もある。
個人的には、劇場版は大きなスケールで圧倒されたいなと今作で思った。

2014/静野孔文/★★☆☆☆☆


そこのみにて光輝く



ぬめっとした空気が、スクリーンを通して伝わってくる。
重い題材を、テンポ、音楽によってそう感じさせない。
一つ一つが丁寧で、陰湿な部屋の温度が手に取る様に、
美味しそうな食事が生活を物語る様に、
浴びる水や海波が、そして光が息吹の様に。
映画が観客に寄り添っていた。

俳優陣の演技、その場にまさに生きているかのようで美しかった。
池脇千鶴の振り向き際や捉えどころの無い表情、
高橋和也の醜さや逸らすような素振り、
菅田将暉は汚い歯がよく似合う。彼の変化は自在で魅了する。
数年後、もっと化けているだろうと期待してしまう。

綾野剛の出演は少なかったが、確かに存在感していた。
セックスシーンの照明の当て方、そこに向かう姿勢が真摯的で感服。
兎に角、映画は函館にあったし、その映画は確かに観客の心に届いていた。菅田将暉の去り際は彼が残した証。
愛に溢れた今年を代表する邦画だった。

台詞やモノローグではなく、表情や情景だけで映画は成立するということを体現していた。
語らないことが、語ることを上回ると教えてくれた。
その人にとって何か大切なものを再認識させてくれる傑作。
人生は繰り返しの中にあって、ふとした瞬間に幸福があると感じた二時間でした。

2014/呉美保/★★★★☆☆


映画 クレヨンしんちゃん ガチンコ!ロボとーちゃん


22作目にして劇場で観るのは初。
何作か、大人帝国くらいしかちゃんと語れない僕だけど今作は最高でした。ひろしは何も無いけれど、家族の愛、家族の存在が全てだからとても強かった。
しんのすけもその姿を見て父の強さを感じていた。

あの出来事を忘れてはならぬと記憶の扉に語りかけるラスト、映像で見せつけられた。
僕はしんのすけと同じ境遇では無いから泣けなかったけど、この映画は忘れないだろう。
クレヨンしんちゃんだから許される詰め込んだ構成が最高でした。

2014/高橋渉/★★★★☆☆


キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー



アベンジャーズのマーベル作品の中で一番抜きん出た作品だった。
アクションスピードと迫力が最高。
過去を意識した作りながら、現代の政治的情勢を反映させていて映画と現実が交錯した。
ロバート・レッドフォードの配役がそれを色濃くあらわしている。

アベンジャーズ2への布石があり、その流れ方が素晴らしくかなり進展があった。
ウィンター・ソルジャー自身がこのあとどう変化していくか。
愛国心のアクションの裏に幾つもの仕掛けがあって、歯車が回るように進む。

2014/アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ/★★★★☆☆


アスガー・ファルハディ監督




アスガー・ファルハディ監督作は、観客だけが物語の道筋を知っていて、主人公がその中で答えを探して行く。だがその結末は誰も知らない。

故のサスペンスだが、その過程が余りにも心情とリンクするため衝撃を受ける。

筋書きが有るようで無い人間ドラマ。

答えもまた有るようで無いリアルな人生のように。



『別離』は何度観直しても違うドラマを辿っていく。

それは鑑賞時の僕の感情によって変化する。

誰の目線にも潜り込んでしまって、今回は主人公の娘。何だろな、この繋がっていく感じ。

紐解かれる脚本と子供の演出が素晴らしいが、

それ以上に「カメラに映らない向こう側」を想像させる空気感が残酷で重い。




『彼女が消えた浜辺』『別離』は傑作。

そしてまた最新作『ある過去の行方』も傑作。



劇場でアスガー・ファルハディ監督作が観られるのに観ないのは勿体無い。

是非この機会に劇場に足を運んで下さい。

決して後悔はしません。

皆で『ある過去の行方』の話をしたいです。

僕ももう一度観に行きます。



アデル、ブルーは熱い色



去年、カンヌを包み込んだ問題作。
パルムドールを監督、キャストに捧げた本作。
自分の中で何度も内容を消化した。
ネット上にいくつも解説や感想があがっているし、これは絶対劇場で観て欲しいので僕は敢えて書かずにおこう。

監督自身がアデルを尊敬し、アデルのこの先がどうなるか僕も教えて欲しいという言葉をきき、あぁそういうことかと腑に落ちた。

好きなシーンを一つ。
アデルからエマが去り仕事で訪れた海辺。
5分だけと時間をもらいアデルは海に飛び込む。
最初は引きでアデルの全身を映す。
パッとカメラが切り替わるとアデルの頭のすぐ上から彼女を映す。
波に流されながらも、アデルは光が射し込む海にゆっくりと溶けていく。
そう、青の時代を失ったアデルが青の瞬間に溶けていく。
その瞬間、僕の中で時が止まった。

美しかった。

何度でもアデルと呼びかけたくなる。

アートでも日常でもドキュメントであり、
そのどれでもないような。

エマ、あなたの演技は素晴らしかった。
アデル、あなたの演技は素晴らしかった。

どちらの気持ちも痛いほど分かる。
分かった気になっているだけかもしれない。

2013/アブデラティフ・ケシシュ/★★★★★☆



おとなの恋には嘘がある



こんな僕でも共感できるところがたくさんあって、無理のない親子関係、恋愛模様のリアリティ。
嫉妬するぐらいの絆にほっこりすると同時に泣けてくる。
娘役の二人のあの佇まい、自然な綺麗さがまたいい。
特出していたのは、主演の二人の演技力。
ジュリア・ルイスの母役は、日本にも通じるところがあって彼女の表現の幅に恐れ入った。
そして、ジェームズ・ガンドルフィーニ。
彼がただ存在していただけでグッときた。
急死したことを知っていたからではあるが、彼が今作に残したものは大きい。
体で示す父の姿、それはスクリーンそのものに投影される。
映画同様、僕のこの思いもアルバートに捧げます。

よく分かった、もう言わなくていいよ。

2013/ニコール・ホルフセナー/★★★★☆☆



ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!



コルネット三部作、完結?作にしてはネットワークとのラストが物足りない感じはあったが、小ネタ、笑い、掛け合いはさすが。
あらゆる映画へのオマージュが今作も満載で。
それに加え、エドガー・ライト作自身への問いに応える感じは映画ファンにはたまらない。
彼の作品を観ていると、無条件でハッピーになれる。
映画オタクが作る映画は、それだけにとどまってしまう傾向も少なくないが、
本作はふらっと立ち寄った人でも楽しめる。
僕も十二分に楽しんだ。

2013/エドガー・ライト/★★★★★☆



ローン・サバイバー



タイトル通り、結末が分かっているという実話ベースの難しいところではあるが、
それをも越えてくるラストにグッとくる。
ヒロイックにならないよう注意を払っていたが、エンドロール前の演出が映画的すぎて残念ではあった。
それでも、アメリカの歴史的惨敗劇を描いた点は見事。
行き場を失ってどうするのかと思ったら、選択肢はなんと後ろの崖を飛ぶ!
その転げ落ちる描写は圧巻の一言。
個人的には、死を悟った隊員の最後の死に様が全てをあらわしているようで動けなくなった。
あの死に方は歴史的に素晴らしかった。
軍事ヘリが撃ち落とされるシーン然り、とても低予算だとは思えない。
ミラノ1の大スクリーンで観て良かったなあ。

2013/ピーター・バーグ/★★★☆☆☆


あなたを抱きしめる日まで



コメディとドラマの交わり。
想像以上の残酷な結末、それを上回る軽快さ。

2013/スティーヴン・フリアーズ/★★★☆☆☆


ある過去の行方



いつもは鑑賞中に映画とリンクしながら思いが絡み合うように言葉となって整理していくのだけれど、
今作はすぐに出てこない。『別離』同様、解けていくような脚本と待ち受けているラストシーンの衝撃。映画を観ているのだと忘れるくらいのドキュメント。傑作。

現実に引き戻されるラスト、あれを美しいと呼ぶのだろうか。誰もが共感出来る要素を散りばめつつ、到底届きそうもない情緒的な息苦しさがある。あの生乾きなペンキを雨粒がさらっていくように、何処かに忘れてきた記憶は漂い、生活の中に浮遊しながら交錯した感情が掻き消していく。

とにかくもう一度観たい。彼が映画を作り続ける限り僕は劇場に足を運びたい。アスガー・ファルハディ監督最新作。

2013/アスガー・ファルハディ/★★★★★☆


クローズ EXPLODE



2014/豊田利晃/★☆☆☆☆☆


大人ドロップ



見事な学園生活のリアリティと映画的空想演出の均衡が、逆の思春期の不安定な感情を映し出す。原作の表現や引用範囲は分からないが、テンポの良い掛け合いと台詞回しが絶妙で、思いを馳せる回想の青春、これから追い掛ける青春、観客個々の思い出が幾通りもの青春映画を創り上げる。

ただの青春映画ではない青春映画。学生の縮図と男女関係と友情を小さく描くことで単純な群像劇にしない。挿入されるモノローグが観客の心を代弁し、意図しないところで感情の揺らぎに気付く。池松壮亮が青春そのもので、前野朋哉が人生そのものだ。彼の相棒役のハマり具合はピカイチ。

思いを寄せる女の子を追い旅に出るあの言語化が難しい表現の描写、山を駆ける場面、アパートの二部屋を映すフィックスのカメラなどのシーンの切り取り方、特に電車のシーンは拘ったであろう上手さがあった。「息子」が流れた時は感服した。グッときた。

タイトルにあるドロップが物語を動かし、重要なアイテムとして展開していく。ラストのカタルシスは感情を移ろいを体感した観客にしか分からない、ジワジワくるラスト。挿入歌、テーマ曲共に黒猫チェルシーが担当しているが、いつになったら渡辺大地の高校生役に違和感を覚えるのか。

注目の池松壮亮、存在感が一層増す橋本愛、相棒役なら彼の前野朋哉、演技は初見ながら小林涼子なしにはこの映画は語れない。今年こんな日本映画を観られるとは思っていなかった。日本映画だからこそ出来る素晴らしいモヤモヤの青春。

観やすいはずです。もしかしたら回顧録に泣けるかもしれない。笑い、楽しさ、感動、泣き、今の映画にはありふれた言葉だけど、こんなに体現している邦画は少ない。皆さんも劇場で観て盛り上げて欲しいです。予告やあらすじを観ないで行くことをお勧めします。是非!

2014/飯塚健/★★★★☆☆


ウォルトディズニーの約束



原題と邦題の相違点。
その視点で映画は変わる。
ディズニー社の意気込みは素晴らしい。
笑い、感動、最高のエンタメ作品。

2013/ジョン・リー・ハンコック/★★★★☆☆


オール・イズ・ロスト 最後の手紙



一人舞台。
エンドロールの仕掛けは観逃せない。

2013/J・C・チャンダー/★★★☆☆☆


グランドピアノ 狙われた黒鍵




2013/エウヘニオ・ミア/★★☆☆☆☆

オーバー・ザ・ブルースカイ



とにかく、ラストの演出!

2012/フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン/★★★☆☆☆


hunger



スティーブ・マックイーンの処女作にしてマストピース。
センセーショナルな映像の裏には幾重にも重なるドラマがある。

2008/スティーブ・マックイーン/★★★★★☆


白雪姫殺人事件



2014/中村義洋/★☆☆☆☆☆

フルートベール駅で



ドキュメンタリーの延長の演出。
黒人とアメリカ社会の宿命。
完璧ではない主人公の選択、もがき続けた果ての結末。
演技一つ一つにグッとくる。

2013/ライアンクーグラー/★★★★☆☆


ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅



アレクサンダー・ペインの最高傑作!
映画と観客、父(ブルース・ダーン)と息子(ウィル・フォーテ)のふたつの心が確かにつながった。
スクリーンと僕が結びついた時、世代交代の幕開けと青春に決着がついた。

2013/アレクサンダー・ペイン/★★★★★☆


ワン・チャンス



オペラ歌手ポール・ポッツがオーディション番組の優勝で人生を変えた半生を描く自伝的コメディ映画。

監督が『プラダを着た悪魔』『23年目の夫婦喧嘩』のデビッド・フランケルということもあり、TV番組の感動ドラマのような万人向けに作られている。
コメディ要素を盛り込んだ改変がうまく、笑いの後に涙を誘うような演出。

冒頭のファーストシークエンスでいじめられっこの過去から現在をテンポよく映し彼の人物像を提供したうえで進んでいく流れは気持ちが良かった。
ただ、時間経過を何度かテロップだけで描いたところがわかりやすいながらも一度間をとってしまうために息をついてしまったのが残念でした。
本作の見所は、キャラ作り。
その細かな気遣いにグッときた。

2013/デビット・フランケル/★★★☆☆☆