LIFE!



ベン・スティラー監督・主演でジェームズ・サーバーの小説を映画化した、1947年ノーマン・Z・マクロード監督『虹を掴む男』のリメイク作品。ファンタジーを超越した壮大な妄想を力に現実の旅に出る。その夢のような大冒険は人生を豊かにしていく。ベン・スティラー最高の新境地へ。

想像の世界は夢と希望に満ち、愛に包まれていた。様々な仕掛けのメタファーを一つ一つ紡ぎ取るだけで観客は映画の主人公に。彼の心はヒーローの心臓で脈打つ。その供給のスイッチは僕自身が持っていた。ヒロイックな物語にユーモラスな描き方のバランスも流石で、映画の旅は一瞬だった。

妄想と現実の境は最早なく、切り開くのはトム少佐でありそれは自身自身。そんなメッセージは強く打ち出され、ありきたりな言葉だが、感動した。大好きなボウイの「Space Oddity」がキーアイテムとして使われていて、流れる度に感情に語りかけられ、涙が溢れた。

泣く作品ではないだろうけど、僕は泣いた。映画という行為に出会って二年半、映画と共に歩んできたが劇場で泣いたのは『フラッシュバックメモリーズ3D』『ゼロ・グラビティ』についで三作目となった。何度でも観直したい、その都度発見があるだろう。最高の一本でした。

この作品の素晴らしいところは、予告で大きく取り上げられる妄想癖に重きを置いていないこと。重要なのは、現実をどう生きるか。夢は大切だけど、叶えるためにどう現実で行動するかの問い。アクションを起こそうと鼓舞させるような演出と台詞たち。観て元気になる映画って素敵ですね。

パロディと思われるシーンも沢山あり、様々な映画を思い浮かべました。ラスト前に、冒頭の言葉をそのまま上司に突き返すシーンは痛快でその後のスローガンの掛け合いには笑った。LIFE誌最終号のラスト、ネガの真相、幽霊ネコ。「美しいものは目立つことを嫌う」相応しい結末。

今年を代表する一本。是非。

2013/ベン・スティラー/★★★★★☆