それでも夜は明ける



今年のアカデミー作品賞受賞作品。
スティーブ・マックイーン3作目にしてこの境地に。
物語は、題名の通り明瞭。
構造も分かりやすく単調なのだが、一方で物語は事実に基づきながらとても奇妙な創りと孕む感情は複雑だった。
観おわった直後の率直な感想としては、内容は全く別として、アカデミー会員を揺さぶり、好まれ、作品賞取るんだろうなーと思ったが、何故この作品が受賞したか理解出来なかった。
これ、そんな作品か?という具合に。
賛否が早くも分かれているが、僕は完全に否定派。

前作『SHAME』で圧倒的な演出力を見せつけたスティーブ・マックイーンは、今作でもその才能をいかんなく発揮している。
共通しているのは、露呈してはいけない或は出来ない、個々の、歴史の「恥部」を物語を通じて明らかに隠しながら露呈させていく点。
逆接のテーマが浮き彫りになる。
だから奇妙であり、演出の上手さなのだ。

アメリカは明らかに今回のような奴隷制のテーマを避けていた。
ここに挑戦したこと、成し遂げたことに賞賛が贈られていることは理解出来るし、これからやらなければいけないこと。
だけど、映画、特にエンターテイメントとしてこれは全く別で、今作にはそれを感じられなかった。

逆に、天晴れなところは
冒頭の説明しない奴隷の虐げられている映像が後に展開し繋がっていくところは気持ちが良かった。

そして、何度かある長回しのショットは素晴らしかった。
特質して印象に残ったのは、やはり主人公が立ち向かった結果、長時間首を吊られたシーンは歴史に残るのではないだろうか。
本当にそこだけ見るだけでも価値はあると思う。

劇中に登場する、奴隷達が奏でる魂の叫びとでも呼ぶにふさわしい唄と詩は、今でも僕を掴んで離さない。
エンドロールで再び僕は鳥肌がたち、映画の余韻の中に足を踏み入れざるを得なかった。
実際、あの歌声が今でも頭をよぎる。

ラストシーンに納得がいけば良い感想になったのかもしれない。
あそこは、眼で語り、映像だけで問い掛けて欲しかった。
あそこに疑問を持った人はどれだけいるのかな。
それにしてはあっさりしていて、無駄な会話に感情は失速していった。

いかにして翻弄され苦渋を舐め、12年間どのように生きたかは物語を見れば明らかだが、それに反して苦しさは横を通り過ぎ、感情はスクリーンの中に浮遊したままであった。

2013/スティーブ・マックイーン/★★★☆☆☆