ドラッグ・ウォー 毒戦



ジョニー・トー監督50作目。
中国全土を舞台のノワールアクション映画。
前半から中盤にかけてののめり込むような演出と息を飲む静かな心理戦は素晴らしかったが、後半の失速感とラストカットは勿体無い印象。
役者の演技に、物語上の演技を重ね、ギリギリのところの間が絶妙で、弱そうに見せて、実は...みたいな銃撃戦と空間演出が噛み合って楽しめた。
最後まで人間のエゴを出し、どうしようもない堕落感が痛烈だ。
ホテルでの心理戦のバランスがとにかく凄い。
タイトルにもなっている今作のテーマはドラッグを取り巻く社会との絡み合いなのだが、
真に捉えていたのは、ドラッグに溺れていく人間ではなく、それでも尚他を差し置いてでも生きようとする、生への渇望ではないだろうか。
生きたい、それが麻薬の役割を果たし、本来なら求めるべき希望の生が結果的に破滅の根源になっている構造はあまりに恐ろしく皮肉だ。
だからこそ、あのラストは...

2013/ジョニー・トー/★★★☆☆☆