スノーピアサー



ポン・ジュノ監督ハリウッドデビュー最新作。
ハリウッドとか関係無くポン・ジュノの作品は映画館に観にいかなくてはならないという使命感。
だから、今作は必ず映画館で観なければということなのです。

原作はフランスのグラフィックノベル。いわゆるバンド・デシネってやつですね。
僕は、ハリウッドということよりも、この漫画原作って事が作品の進行軸が大きく左右されているように感じました。漫画のパッと見た時の印象からのスピード感と没入感を、映画の画にする脚本作りがどうなされたかということです。

そのため、挙げればキリがない設定のムズムズは抜きに観る方が楽しめると思います。
少なからずそれでも、首相の入れ歯、魚で足を滑らす、黒人の特設寿司屋、バトルをやめ新年を祝うシーンなどシニカルで独特なギャグが盛り込まれ、シリアスな物語をポン・ジュノ演出でまとめ上げていた。それだけでも充分に面白い。

極寒で外に出られない列車の中だけという限定的な閉塞空間。
前に進んで行くということを横の繋がりをうまく利用して画作りがなされているといこと。これがどけだけ設計されているかを一から辿ると本当に上手い。

物語の本質はそういった繋がりでしかない列車の縮図を、現代社会の不安定な資本主義の寓話に対する痛烈な風刺にも取れるが、資本家と労働者を神とそれ以外に置き換えることが出来る関係性にあると思う。
表面的には『マトリックス・リローデッド』のよう。
しかし、今作は根本が違うのだろう。
序盤のジョン・ハートの手にはキリストがあり、説明が一切ない先頭から届く赤いメモはまさに預言なのだろう。

そして、前に行くにつれて明らかになる列車の世界の謎、つまりスノーピアサーは不完全であると知らしめた。
神の死はまさに尊厳の崩壊からなる新たな希望だった。

個人的に素晴らしかった点は、
有無を言わさない絶対的な伏線回収。
ラストシーンは結構痺れた。
アジア人と子供が見る世界はどんな結末なのか、やはりそれは始まりなのだろうか。

怪物的なティルダ・スウィントンや存在感、抜群なジョン・ハートを観るだけでもいい。
何よりソン・ガンホがとにかく良くてイケメンだった。

いつもよりエンタメ色が強い分、楽しみ方は変わるだろうし、納得いかない部分も多々ある。
ジョン・ハートの結末には、、、

それでも
ポン・ジュノ演出、ソン・ガンホ出演は観なくてはならない。
そういう作品なのだ。

2013/ポン・ジュノ/★★★★☆☆