ある過去の行方



いつもは鑑賞中に映画とリンクしながら思いが絡み合うように言葉となって整理していくのだけれど、
今作はすぐに出てこない。『別離』同様、解けていくような脚本と待ち受けているラストシーンの衝撃。映画を観ているのだと忘れるくらいのドキュメント。傑作。

現実に引き戻されるラスト、あれを美しいと呼ぶのだろうか。誰もが共感出来る要素を散りばめつつ、到底届きそうもない情緒的な息苦しさがある。あの生乾きなペンキを雨粒がさらっていくように、何処かに忘れてきた記憶は漂い、生活の中に浮遊しながら交錯した感情が掻き消していく。

とにかくもう一度観たい。彼が映画を作り続ける限り僕は劇場に足を運びたい。アスガー・ファルハディ監督最新作。

2013/アスガー・ファルハディ/★★★★★☆