去年、カンヌを包み込んだ問題作。
パルムドールを監督、キャストに捧げた本作。
自分の中で何度も内容を消化した。
ネット上にいくつも解説や感想があがっているし、これは絶対劇場で観て欲しいので僕は敢えて書かずにおこう。
監督自身がアデルを尊敬し、アデルのこの先がどうなるか僕も教えて欲しいという言葉をきき、あぁそういうことかと腑に落ちた。
好きなシーンを一つ。
アデルからエマが去り仕事で訪れた海辺。
5分だけと時間をもらいアデルは海に飛び込む。
最初は引きでアデルの全身を映す。
パッとカメラが切り替わるとアデルの頭のすぐ上から彼女を映す。
波に流されながらも、アデルは光が射し込む海にゆっくりと溶けていく。
そう、青の時代を失ったアデルが青の瞬間に溶けていく。
その瞬間、僕の中で時が止まった。
美しかった。
何度でもアデルと呼びかけたくなる。
アートでも日常でもドキュメントであり、
そのどれでもないような。
エマ、あなたの演技は素晴らしかった。
アデル、あなたの演技は素晴らしかった。
どちらの気持ちも痛いほど分かる。
分かった気になっているだけかもしれない。
2013/アブデラティフ・ケシシュ/★★★★★☆