ジェイソン・ライトマン監督最新作。
彼が作るメロドラマ。
いい意味でも悪い意味でも裏切られた。
「脱獄犯との禁断の愛」
という、原作物で言ってしまえばありきたりな設定だが、本作はどうやらそう簡単にはその筋に進まない。
お互いが過去に対してとらわれていて、
お互いがそこに依存するかのように惹かれ合う。
その過程はいささか強引で、その感情に納得した上で観ることは出来なかったが、そこまでに至る描写はとても丁寧で、何故か納得した自分がいた。
ケイト・ウィンスレットがこの役を演じるということは、
彼女そのもののような映画的濃厚な愛を見せてくるのだろうと思っていたが、一切そんなシーンは無かった。
むしろそれをあえて隠した事で、より性の部分を想起させられた。
それは、導かれるダンス。
それは、壁越しの言葉のリズム。
ベッドシーンは無かったけど、息子から表現された、その「リズム」という言葉は、幼心ながらも成長していく彼から語られることで、省いた愛は十分だった。
そして、今作の象徴的なのはやはり食事のシーンだろう。
出会って間もない男に当然のように不信感を抱く。
それを、手足を縛った上で淡々とスプーンで作ったトマト煮を与える。
何度も、何度も、
一口、一口と。
その一口ずつ彼女は彼に心を許していく。
決定的だったのは、
熟れた桃で作るピーチパイ。
今度は息子も加わった。
ここで2人の愛は家族の愛と変わり、
完璧ではないが次第に心が移ろっていく。
画だけの表現。
素晴らしかった。
このシーンの手つきはエロスそのものでした。
単に禁断の愛の映画だけではなく、
息子に注がれた愛、
愛と交わった息子の成長記録。
それが明かされる終盤、
息子目線だったと解る瞬間、
何か壮大なものを感じた。
ラストは『幸せの黄色いハンカチ』を彷彿とされられた。
2013/ジェイソン・ライトマン/★★★☆☆☆